【医師だって悩みます】更年期!実は大病の可能性も!放っとかないで治療&セルフケア

更年期や閉経は、ネガティブな印象が強いですよね。身体や心の揺らぎに不安を感じている方も多いかと思います。けれど、閉経後は女性にとってホルモンに左右されない初めての黄金期ともいわれることも。

今回は、前回、性交痛について伺った医学博士 富永喜代先生に、著書の『性のトリセツ』(KADOKAWA)の中から、バリキャリの富永先生を襲った更年期の実体験を踏まえながら、更年期にまつわる話や治療法を教わりました。

医師だって更年期は悩むんです! だから、「病気じゃないから」「女として終わる気がする」なんて、不安を抱かないで!プチ更年期、更年期真っ最中の大人世代の皆さんが、今から「自分にできること」を一緒に見つけてみましょう。

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お話を伺ったのは……

富永ペインクリニック院長 富永喜代先生
医学博士。日本麻酔科学会専門医。1993年聖隷浜松病院などで麻酔外科医として勤務。2万人超の臨床麻酔実績を持つ。2008年愛媛県松山市に富永ペインクリニックを開業。全国から患者が集まり、のべ23万5000人の痛みを治療し、性交痛外来では1万人のセックスの悩みをオンライン診断する。

今まで聞けなかったような性のお悩みにズバリと切り込み、正しい知識を与えてくれるYouTubeチャンネル「女医 富永喜代の人には言えない痛み相談室」は登録数28万人、総再生回数は6500万回を超え。SNSのフォロワー数は42万人と今や目が離せないセクシャルウェルネスの中心的医師です。近著に『死ぬまで「性」を愉しみ尽くす本』(永岡書店)など。

【INDEX】

昔と今ではこんなに違う!「更年期」との向き合い方

前回の性交痛の話でも取り上げましたが、まず昔と今では寿命が大きく違います。昔は、閉経と共に『女として終わる』と考える方も多かったかと思いますが、終戦直後の平均寿命が60歳ならば、更年期を終えて数年で寿命が尽きてしまうという時代。女としてというより、人として終わるのが終戦直後なんです。

かたや、今は人生100年時代。閉経してからも20年30年と生きていく時代。親世代の50、60代の頃と比べても、今の私たちは若い!違いすぎるんです。見た目だけじゃなくて、健康度が違う。世の中はサプリメントやスポーツジムなども豊富に揃い、健康意識も向上しています。

閉経したとしても女性は女性ですし、人生が終わるわけではありません。もう出産できない年齢でも女性です。出産だけの価値観で人間の価値は決まりませんから! 閉経したとしても人の価値が下がったとも思いませんし、私自身も若かった頃より今の方が様々な経験を積んで成長も遂げているのを実感しています。だからこそ、閉経すると『女が終わる』という表現は、現代の女性に当てはまらないのです。

50歳前後で卵巣の機能が終わるというのは、遺伝子に組み込まれていること。どんなに筋力があっても、やる気があっても、健康に気を払っても、閉経は訪れるんです。けれどそれを恐れることはありません。寿命が延びた分、私たちは知恵もつき、社会に貢献することができます。その価値はすごくあります。それを私たちは次世代へ伝えていくことも大切だと思っています」

先生もショックを受けた!更年期体験談①「アソコのニオイを息子に指摘された日」

「“更年期”について啓発していく中で、じゃあ自分はどうなんだ?って気になりますよね。

私が46歳の時、小学生だった息子に『ママのアソコ、くさいよ』と言われたことがあるんです。あまりのショックで『そんなはずないでしょう!』とブチギレてしまいました。勇気を出して伝えてくれた息子の気持ちを頭から否定。オープンマインドに自信があった医師の私ですら、アソコがくさいと指摘されたら恥ずかしいし、辛いし。怒ってしまったことに対しても大後悔の波が押し寄せました。

でも、うっすらは気がついていたんです。ズボンを脱いだらツンとしたニオイが漂うことがあるってことを。それなのに怒ってしまい、反省しました」

先生も悩んだ!更年期体験談②「仕事モンスターの私が仕事ができなくなった日々」

「それから時は進み、ニオイ事件から3年が経過し、私が閉経を迎えた頃、突然、朝に起きられなくなって、お風呂に入っていたら涙が出るなど更年期障害に悩まされはじめたのです。

私は自他共に認める『仕事モンスター』。夜中3時まで仕事して、次の日は朝から診療。そんな暮らしをずっと続けていたら、その陰に隠れて更年期障害が進行していたんです。いつの日か、医師の不在のクリニックに患者だけいるという最低な状況を招いてしまったこともありました。医師という社会的責務が重い職業にも関わらず、朝が起きられなかった。そもそも働き者の私だったから、自分でも信じられないですよね。

仕事に穴を開けるなんて、これは普通じゃないとようやく気づきました。

ベッドからドアまでの距離が異常に長かった。身体を引きずるようにしても動けない。だから11時まで二度寝。それでようやく起きられるという日々。『これはうつ病?』と思ったこともあるけれど、夕方になったらすごく元気なんですよ(笑)。でも朝は本当にニッチもサッチも行かない。だから深刻すぎますよね。

他人のことは“更年期障害”だねと冷静に話せても、自分事になるとパニック状態でした。そんな、仕事に支障をきたして、治療を始めたのが49歳の頃でした」

心配しないで!更年期だって治療で症状を緩和できる

「更年期の不調は、卵巣でエストロゲンが作れなくなることが原因ですので、足りなくなってきた女性ホルモンの必要最小量を補う女性ホルモン補充療法(HRT)が一般的な治療になります。飲むタイプ、塗るタイプ、貼るタイプ、腟に入れるタイプなどがあり、簡単に日々続けられる形状で処方されるものがあります。他にも下記のような治療法があります」

「詳しくは本にも述べていますが、基本的には体質や症状によって使う薬を選びます。HRTは疾患などで受けられない方もいますので、治療を受ける時は医師への相談が必須です。富永ペインクリニックのオンライン診療でも処方でき、保険適用が可能ですので、病院に行く勇気がない、行く気力がない方はぜひ活用してみてください。

私は、塗り薬のエストラジオールとプロゲステロンの内服を使いました。治療を始めると、本当にすぐに症状が緩和。やはり朝起きれないこの症状は更年期症状だったのだなと再確認しました。

ちなみにデリケートゾーンのニオイや乾燥は、エストラジオールを配合した美容オイルを使うようになって、約8週間で悩みは解消。擦れて痛かったTバックも履ける身体に戻りました(笑)」

ストレスはなくならない!更年期症状は理解されにくいものと心得て

「まず、更年期障害は共感が求めにくいということも知っておいてください。女性なら更年期は100%通る道。けれど、更年期障害は2人に1人しか症状が出ないんです。症状も様々。自律神経失調というのが、更年期障害の本筋だから、どこにどう出るかというと、人によって違うし、重症度、深刻度も違います。まわりに更年期症状を話しても理解されず、余計にツライ思いをすることもあると知っておいたほうがいいと思います。

更年期障害は、ストレス耐性やその人のおかれている家庭環境、社会的な立場、経済問題などの環境因子も影響すると言われています。けれど、ストレスがない人生なんてありません!ストレスがあってもどうにかするということを考えるのが人生。『ストレスを解消しましょう』『ストレスを抱えないようにしましょう』ではなく、ストレスは取り除くことはほぼ不可能なので、ストレスがありながらどうするかと考えるのが治療であり、対策。ちゃんと治療法もありますし、すべてを理解してくれる人ばかりではないけれど、それでも自分で何かできることがないかと始めるのがセルフケアなんです。

ただ、症状は適切な対処法を知り、専門医を頼ることで、症状は緩和、改善できますので、より良く生きるために身体に起こる変化を受け入れて、前向きに生きることが人生を謳歌する秘訣だと考えています」

更年期?病気?不調を感じたらすぐに医師へ相談を

40、50代の更年期に何かしらの症状がある場合、その症状はあくまでも“更年期障害の可能性”であるということを必ず頭に入れておいてください。この年代は何でもかんでも更年期に当てはめてしまい、病気の発見が遅れることもあります。

『しんどい』、『だるい』と思っていたら、胃がんや大腸がんが隠れていたとか、最近不調と思っていたら実はうつ病だったなど。本当の病気を見逃してはいけないので、何かの症状を感じてすぐに更年期と結びつけないというのはすごく大事です。

『不調を感じたら、早く医療機関にかかりましょう』といつも必ず言っています。

自己判断するのが一番危ない! もしどこが悪いのかも分からないようなら、総合内科にかかってみてください。

あとは、70歳くらいの方で『今も更年期なんです』という方が時々いらっしゃいますが、スタートは更年期がきっかけかもしれないけれど、15年も20年もその症状が続いているのは他の病気の可能性が。更年期の終わりは誰も伝えてくれませんが、更年期は約10年間ですよ!『しんどいのは更年期だから。病気じゃない』というのを心の糧にして、他の病気を見過ごさないように気をつけてくださいね」


24万人の性の痛みや悩みを解決した富永先生による秘密の処方箋がまとまった1冊。先生が、初めて「性と健康」にフォーカスした本です。

加齢によるホルモン変化、更年期を和らげる方法、痛み・ニオイ・セックスレスの処方箋、自宅でできるデリケートケアetc. 人生100年時代、喜びを諦めないためにぜひ読んでみて!

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