連載 Vol.17 大好きなものを知るって面白い!本場「フランス」の香り文化に興味津々
以前の連載で、メークと同じように「香り」も
自分を上向かせてくれるアイテムとして紹介してくれた石井さん。
今回はそんな幼いころから親しんできた香りについて学びを深めます。
香り先進国ともいわれるフランス出身であり、名だたるブランドの香水を多数手がけている
ブルーベル・ジャパン代表取締役社長 セルジュ・グレベール氏にお話を伺いました。
心をときめかせてくれる
“香り”との出会い
石井さん:昨年、仕事でパリに行ったのですが、香水が本当に好きで……。随一の香水売り場を持つと言われているプランタンまで一人、行きました。コスメがメインの日本とは異なり、香水の売り場の方が広くて、キラキラと輝く香水瓶が1フロアに並んでいて感動したんです。
グレベール社長(以下、社長):そうですね。日本では見られない光景ですよね。
石井さん:フランスではホテルやレストランでも、どこもいい香りが漂っていて、“香りでおもてなしをされている”と感じます。あるレストランでは香りを嗅がせてもらい、そこからお食事に入るというユニークなお店もあって驚きました。
社長:それは珍しいレストランですね(笑)。ですが、たしかにフランスでは小さい頃から香りに慣れ親しんでいると思います。どこの家庭でもその家の香りというものがありますし、香りはフランス人にとって身近な存在なんです。
石井さん:家の香りというのは日本には根付いていない文化ですよね。美容家という仕事柄、たくさんのコスメに触れてきましたが、今思えば香水はコスメより先に手にして興味をもったものかもしれません。幼いころから素敵なボトルの香水にいつも憧れていた記憶があります。
社長:たしかに、香水には美しいボトルの魅力もありますよね。素敵なボトルは、時が経っても変わらず手元に残しておきたいと私も思います。では、石井さんは子どもの頃から香水が好きだったんですか?
石井さん:はい、そうだと思います。多分、はじめて“香り”に触れたのは幼いころ大切にしていた香り玉。コルクの瓶に香りのついたビーズのような小さい粒が入っているものなんですが、それを持ってフワッと香らせることが女のコらしくてオシャレだと思っていました。
社長:そうだったんですね。フランスでは、母親のつけている香りが思い出の香りであり、“香り”に触れるきっかけのひとつかもしれませんね。
石井さん:たしかに、フランスでは赤ちゃんのときから香りに自然に触れているイメージです。
社長:赤ちゃんのときからとても軽いものを香らせていることもありますし、男性の場合はガールフレンドが香水を選んでくれたのをきっかけに、こだわりを持ち始める人も多いようです。あとは年齢を重ねることで自分の好みもわかっていった気がします。色々と試してみては、たまに失敗もして(笑)香りを身につけることがひとつの習慣になっていくんですよね。
時代を彩る日本とフランスの
香り文化
石井さん:高校生ぐらいのときに、香水がすごく流行った記憶があります。当時はカボティーヌとか、石けんの香りのプチサンボン。日本では今でも“石けんの香り”というと女のコのいい香りというイメージが強い気がします。清潔感のある香りが好まれるのかもしれませんね。日本人にとって年頃になって初めて触れる香水の香りで、懐かしさもある香りです。過去の香りってどこか脳で覚えていると思います。
社長:たしかに香りでその当時のことを思い出すことがありますね。ですが、フランスにはそういった特定の香りはあまり思い浮かばないです。あるブランドのフレグランスが流行ることもありますが、日本の石けんのように特定の香料ではない気がします。あと、フランスでは日本のように、男性用とか女性用とかこだわらず香りを楽しむ人が多いです。例えば、ローズは今でこそ女性が好きな香りのイメージですが、100年前は男性が使っていたというトレンドがあったんですよ。
石井さん:そうなんですか!? 男性も!?
社長:はい。ローズだけで1000種類以上の香料があるので、実は男性も着けやすいローズの香りもたくさんあるんです。ローズは女性だけの香りではないんですよ。最近だと、よりユニセックスな香りが好まれている印象です。他にも、香水はイタリア、イギリスなどでも親しまれていますが、調香師になるための学校があったり、パフューマ―のエキスパートがいたりするのはフランス特有かもしれないです。
石井さん:やはりフランスは香りの文化が根強い国なんですね。ユニセックスな香りだと、ニュートラルなものが多いので会う人や場所を選ばず使いやすいですよね。
社長:私もそう思います。あとは聞いたことがあるかもしれませんが、香水は体臭消しになる、とフランスでもはじめはその目的で使うものだったんです。現代のようにお風呂に入る習慣がなかったころに広まったとも言われていて。
石井さん:たしかに、実は香水を肌につけるとその香り単体の香りが漂うというより、自分が元々持っている香りとうまく混ざって、いい香りになることがありますよね。
社長:そうですね。そういう意味だと、一定の年齢に達するといわゆる加齢臭が気になってくることも男性が香水を使う理由のひとつかもしれませんね。そんなときに、自分に似合う香りがあれば素敵に年齢を重ねていけると思います。
旅先での楽しみは
新しい香りを見つけること
石井さん:たとえば日本には四季があって、湿度も高いですよね。だから海外で気に入って購入した香水が日本では「違う」と感じて手が伸びなかったりして…。それでも、思い出のひとつとなる楽しさもあるので海外に行ったらその国にあった香水を買うようにしています。クロエのレザーのケースに入っている香水を未だに持っているのですが、その香りで当時の旅のことを思い出すことができるんですよね。昔買ったものだから身につけることはしませんが、今でも私にとっては大切な香りでたまに取り出しては香って楽しむようにしています。
社長:そういう楽しみ方は賛成です。香水は身につけなくても楽しめるものですよね。私の場合は、この国に行く時にはこの香水を身につけるというのが自分の中で決まっています。たしかに気候の違いもあるけれど、日本と比べて海外は天井が高かったり、満員電車はなかったり、空間の広さの違いもあるかもしれないなと思います。
石井さん:そうですね。日本は海外に比べて比較的建物が密集していて、人との距離も近いかもしれません。だから日本だと強い香りでも、海外ではそのくらい主張がある香りの方が素敵だったりするのかも…。その国によって似合う香りが異なる。香水は奥深いですね。
ところで、私は日本で香水を買うときは「元気なとき」に買うようにしているのですが本当はいつ買うのが正解ですか?
社長:特にルールはなくて、好きな時に好きなものを買えばいい。基本はそう思っていますが、纏いたい時間帯や季節を想定して探すといいですね。あとは一緒に過ごす相手やシーンを考えるのもいいかもしれません。
石井さん:なるほど。気分によって違うもの、季節、昼夜、週末によって違う香りを楽しみたいと思っているので、その香りを纏いたい時を考えて選ぶのはいいですね。
社長:はい。シーンによって小まめに香りを変えるのはおすすめですよ。自分の気分も変わりますよね。香りの楽しみ方の形は色々あるので、日本でももっと香水を日常的に上手に活用できる方が増えてくれたら嬉しいです。
石井さん:私もそう思います。ちなみに、いま日本の女性にはどんな香りが人気なんですか?
社長:そうですね、あくまで一例ですが40代の日本女性にはこんな香りが人気を集めていますよ(写真)。先ほどローズは男性も好きな香りと話しましたが、ブルガリのダマスクローズ を使った高貴な香り(A)は女性の間でも圧倒的な人気です。そして、ユニセックスに使えるペンハリガン(B)。
石井さん:私もこの香り、好きです!
- 〈A〉バラの中でも最高級のダマスクローズを採用した、すべての女性が追い求める永遠の美しさを想起させるフェミニンな香り。ブルガリ ローズ ゴルデア オードパルファム 50ml¥12,800(ブルガリ/ブルガリ パルファン事業部)〈B〉フローラルシトラスの香り。女性のみならず男性にも好まれる、万人受けの香りです。数量限定サイズ。ペンハリガン ルナ オードトワレ 50ml¥16,000 3月6日発売(ブルーベル・ジャパン 香水・化粧品事業本部)〈C〉2008年に登場して以来のベストセラー。ナチュラルなローズの香りが自由な精神や産まれながらのエレガンスを体現しています。クロエ オードパルファム 50ml¥11,500(ブルーベル・ジャパン 香水・化粧品事業本部)
社長:ペンハリガンは透明感があり、スッキリとした香り立ち。エレガントなものや、フェミニンなものも変わらず人気ですが、日本でもユニセックスの香りの人気が最近高まっています。最後に皆さんもご存知のクロエ(C)。クロエは今世界中で愛される香水までに成長しましたが、実はこの人気は日本から火がついたと言われています。日本で人気を集めた香りが世界へ広がることもある。クロエはその良い例です。
石井さん:クロエ、とても流行りましたよね! そして今でも変わらず人気な香りだと思います。日本から世界へ人気の香りが広がるということは、日本人の香りに対する感度が高まってきているかもしれないですね。そんな人気の香りに注目が集まりやすい一方で、香りで自分らしさを表現する人も増えてきたように感じます。日本でも香りの文化が深まっているのかなと思ったり。日本人も香水を自己表現のツールのひとつとして、もっと使えるようになるといいですよね。そんな日が楽しみです。
ブルーベル・ジャパン 代表取締役社長 セルジュ・グレベールさん
パリのビジネススクール、HEC経営大学院を卒業後来日。日本在住歴は30年以上で、2009年より現職のブルーベル・ジャパン代表として香水事業に従事。自宅にはフレグランス用のキャビネットを持ち、自身も日々香りを楽しみながら日本の香水市場の拡大に尽力している。
撮影/平井敬治<人物>、石澤義人<静物> ヘア/SATOMI(cheka.)
取材・文/高橋奈央 デザイン/瀬尾侑平
*記事内の商品金額はすべて税抜きです。
<商品のお問合わせ先> ブルガリ パルファン事業部☎03-5413-1202
ブルーベル・ジャパン 香水・化粧品事業本部0120-005-130