連載 Vol.14 格と粋を上手に取り入れて会話も広がる「和装コーディネート」にハマりそう

連載 Vol.14 - KIMONO 格と粋を上手に取り入れて会話も広がる「和装コーディネート」にハマりそう

前回、着物スタイリストの秋月さんに
「和装」のいろはの「い」、着物を選ぶコツを学びました。
和装を生活に取り入れていきたいと思っていた石井さんにとって、
それはオシャレの幅が広がる興味深いお話でしたが、
今回は、和装は帯など小物合わせによって
無限大の着こなしがあるということを教えて頂きます。

素敵なご縁がめぐる、自分を高める学びの時間

場に合わせた帯選びで
着こなしの格を変える

石井さん:着物はシーンによって、それ相応の格式に合わせて選ぶということを学びましたが、着て行く先、お会いする方によって、格を変えるというお話はすごく面白かったです。

秋月さん:格、というと、和装の難しいところと思われがちなのですが、ルールというより相手に対する気遣いと言いますか……。基本的には、洋服でも同じではないでしょうか。では、着物を選んだら次は帯選びですが、帯でも着こなしの格を変えることができるんですよ。コーディネートにおいて帯選びも大事なポイントなのでお話ししていきましょう。

石井さん:よろしくお願いします。

秋月さん:まずは着こなしの印象について。石井さんの普段のお洋服感覚で、淡い色の着物に合わせるなら、さりげなく刺繍が入っていたり、織の素材感があったりする白やパステルカラーを基調とした帯は合わせやすいですし、柔らかい雰囲気を作ることができます。

石井さん:着物も帯も同じようなパステル調だと優しい印象になりますね。

秋月さん:はい、同じ着物に今度はモダンにアレンジされた雷文が織り出された帯を合わせてみます。そうするとシャープな印象のモダンな装いに。ベースは同じ着物でも帯によって印象を変えて着こなせるんですよ。

石井さん:ひとつの着物に対して、帯を変えるだけで全くイメージが異なる装いに見えますね。

秋月さん:そうです。あとは帯にいくつかの色が入っていると、小物の色とリンクさせて色遊びがしやすくなります。そうやって履きものやヘア小物など、どんどんコーディネートの幅が広がりオシャレを楽しむことができるのが和装の魅力だと思いますよ。

石井さん:本当ですよね。では具体的に、帯はどういうものから選ぶと良いのでしょうか?

秋月さん:帯にもフォーマル向け、カジュアル向けがあります。袋帯・名古屋帯・半巾帯の3つがあり、仕立てや素材だけでなく、それぞれ長さと幅も異なります。中にはカジュアル向けの洒落袋帯というものもありますが、いちばん格の高い「袋帯」は、主に礼装に合わせます。最初の一本は石井さんの場合、きちんとした席で着られることが多そうなので、この袋帯か、もしくは幅広く使える織り名古屋帯が良いかと思います。

石井さん:なるほど。ちなみに、名古屋帯ということは名古屋発祥なんですか?

秋月さん:諸説あるのですが、そう言われていますね。帯の代表的な結び方の「お太鼓結び」ですが、「一重太鼓」、「二重太鼓」の2つがあります。大きな違いは帯の長さなのですが、「名古屋帯」は帯が短く、一重太鼓に結びます。袋帯は長さがあるので、二重太鼓に。ボリュームが出て後ろ姿が華やかになりますよ。

石井さん:そうなんですね、ところで、この“宝尽くし”の帯とても気に入りました!

秋月さん:ここから和装の楽しみが始まる運命の一本になるかもしれませんね(笑) 帯は布の状態で売られているので、芯を入れて仕立てなければなりません。
格のある袋帯にするか、普段使いもできる気軽な名古屋帯にするか……どちらが良いかは、その方のライフスタイル次第ですね。ただ、袋帯よりカジュアルとされる名古屋帯でもカジュアルから茶席などセミフォーマルまで使えるものもあります。慣れないうちはその判断が難しいかもしれませんが、とても単純に言ってしまえば、帯そのものの“素材感”も、フォーマルとカジュアルを区別するポイントになります。

白地の「流水文様」袋帯、白地の「宝尽くし文」織名古屋帯、白とこげ茶の「市松柄」染名古屋帯
左から/白地の「流水文様」袋帯¥200,000、白地の「宝尽くし文」織名古屋帯 ¥330,000、
白とこげ茶の「市松柄」染名古屋帯¥150,000(すべてはんなり 銀座店)

石井さん:素材感というと?

秋月さん:見た目でわかりやすいところで言うと、金銀が使われていて華やかだったり、重厚な織だったりするものはセミフォーマルにも使える場合が多いです。反対に、ほっこりと素朴な質感だったり、光沢が控えめだったりするものはカジュアル専用ですね。
たとえば同じ茶席の場合でも、お稽古や小さな茶会では控えめで落ち着いた装いが求められますが、格式のある茶会だと華やかで格調高い装いが必要な場合もあるように、求められる装いはTPOによって変わりますよね。帯の選び方で、仮に同じ着物でもその上げ下げができるということなんです。

石井さん:なるほど、少しずつ勉強していきたいです。

秋月さん:そうですね。和装に慣れ親しんでいくと、知識もついてきて色々な遊びを効かせられるようになるのも楽しいんですよね。帯の格式の差は長さ・幅と華やかさで変わってくる。とひとまず覚えておいて、細かい知識は着こなしながら追々知っていくと良いと思います。

季節のエッセンスを取り入れて
粋な装いに

秋月さん:初心者の方でも簡単にできる着こなしのひとつとして、季節を取り入れた着こなしも素敵です。これからの季節なら、例えば桜。

石井さん:たしかに大人に和装を楽しむならば、ただ着るのではなく粋に着こなしたいですよね。

秋月さん:そうですね、帯で大きく取り入れる他、襟元の半衿や帯留など、小物にさりげなく取り入れたり。またこの帯は桜と一言にいっても、満開の桜から散り桜まで描かれています。これを桜が咲き始めたら「満開の桜」が見えるように帯を巻いて、満開になったら「散り桜」と季節を先取りしていくと素敵ですよね。

石井さん:1枚の帯でも季節に合わせて楽しめるなんて素敵ですし、会話のきっかけにもなりそうです。

秋月さん:ちょっとした会話の糸口になりますよね。普段、和装をあまり着られない方にお話すると「わぁ本当だ」なんてとても喜んでもらえたりもしますね。

素敵なご縁がめぐる、自分を高める学びの時間
刺繍半衿 ¥12,960、帯留 ¥23,760、三分紐 ¥8,640(すべてきもの 円居)、
帯(石井さん着用分)¥224,000(京都一加 東銀座店)、染め名古屋帯 ¥80,000(はんなり 銀座店)

帯留めに“遊び心”を忍ばせる
楽しさは和装ならでは

秋月さん:場はもちろん、季節感を取り入れると粋な着こなしになるというお話をしましたが「帯留め」選びにもこだわると、また楽しみが広がりますよ。たとえば歌舞伎やバレエなどの鑑賞会に着ていくならぜひ演目にちなむモチーフを取り入れてみて。白鳥の湖のバレエ鑑賞に出かけるなら、羽モチーフの帯留めをつけたり……。連想遊びみたいなところが面白いでしょ。

石井さん:本当ですね!あくまでもさりげなく身につけられるから、気がついてもらったときに会話がさらに盛り上がりそうです。

刺繍半衿

帯留め¥10,260/銀細工「小銀杏」、
三分紐¥6,480/京都一加 東銀座店、
刺繍半衿¥12,960/きもの 円居

可愛い雪のモチーフの帯留めは、
半襟と柄合わせをして冬を表現

冬の着こなしには、繊細な刺繍の雪柄が施された清楚感のある白の半襟に、立体的な雪モチーフの帯留めで。顔の近くで人の目につきやすい半襟と、体のセンターにくる帯留めで柄を合わせれば、さり気ないけれど存在感があって心くすぐる冬のコーディネートに仕上がります。冬のパーティーシーズンにもオススメ。

帯留め

バイオリン銀製帯留¥145,800、
三分紐(生成り)¥5,832、
石畳文 袋帯 ¥170,000(すべてはんなり 銀座店)

バイオリンの帯留めでモダンに
音楽会やクラッシックコンサートへ

子どもの音楽発表会、クラシックコンサートなどドレスワンピースで出席する人も多い場こそ、ぜひ和装で。着物ならきちんと感を保てますし、洋装にも馴染む明るい色の帯に、バイオリンの帯留めがアクセントに。大人の遊びが効いた粋な着こなしが叶います。和の装いに、洋の要素を取り入れる新鮮な着こなしを楽しんで。

三分紐

新三傘 銀製帯留¥27,502、
三分紐(水色×紫)¥3,520、
大藤 染め名古屋帯¥210,000(すべてはんなり 銀座店)

歌舞伎の演目に合わせた帯留めに
満開の藤の帯で観劇へ

江戸の風俗を描いた歌舞伎「梅雨小袖昔八丈」の印象的なモチーフ、傘に櫛と青葉をあしらった帯留め。たとえば4月の上演なら、季節の花、藤の帯に合わせて観劇に出かけてみては。
着物で観劇というだけでも十分素敵ですが、分かる人には分かる粋な装いがより大人の着姿に似合うはずです。

足元の“白”が清潔感を
際立たせてくれる

秋月さん:着物を着ると、布で体のほとんどが覆われて細い部分が首・手元・足元しか見えない状態になるので、スッキリとした着姿に見えるかどうかはこの3点にかかっています。

石井さん:そうすると足袋や草履の選び方も大切になってきますね。

秋月さん:そうなんです、私は草履の鼻緒と足袋は必ず白と決めています。鼻緒が白いと足袋とコントラストがつかないので足元の印象がまとまりやすいんです。また、足元に白い部分を作ることで全体をキリっと締めて見えると思うのです。

石井さん:足元の白の緊張感が全体の印象まで引き締めてくれるんですね。

秋月さん:そうなんです。清潔感のある装いを仕上げてくれるのが〝白〟の足元だと思います。基本的な決まりごととしては、色ものの足袋や草履はカジュアル寄り、白はフォーマルという使い分けになりますが……実際のところ好みで決めてもいいと思いますよ。

石井さん:やはり初心者は白から始めるといいですか?

秋月さん:そうですね、白の足袋、白の鼻緒はシーンを選ばず使えると思います。草履は洋服の靴と同じで、個性の強いものよりクセのないものの方が着回しやすいと思います。

石井さん:なるほど。私も、白という色は汎用性があるだけでなく、きちんとお手入れが行き届いていないと使えない色だと思っているんです。清潔感を損なわないように素敵に着こなしたいと思います!

草履¥32,184(れん)/衣装らくや〈左〉草履¥78,840/京都一加 東銀座店〈右〉草履¥33,480/銀座かなめ屋
〈石井さん着用分〉草履¥32,184(れん)/衣装らくや
〈左〉草履¥78,840/京都一加 東銀座店〈右〉草履¥33,480/銀座かなめ屋

撮影/平井敬治<人物>、石澤義人<静物> ヘア/SATOMI(cheka.)
スタイリスト/秋月洋子 取材・文/高橋奈央 デザイン/瀬尾侑平

*記事内の商品金額はすべて税込みです。(2019年2月現在)
<商品のお問合わせ先> きもの 円居☎03-5623-9030、銀細工「小銀杏」☎090-5327-2965、
京都一加 東銀座店☎03-6278-7813、銀座かなめ屋☎03-3571-1715、はんなり 銀座店☎03-5537-0031

この記事が気に入ったら