連載 Vol.31 石井美保さんが今、また気になっている器の世界
今回は、器好きの石井さんがインスタで気になっていた「うつわ千鳥」を訪問。
器は料理が盛りつけられてこそ魅力が活きてくる、というオーナーのお話に、
改めて器が好きという気持ちを再確認することができました。
楽しく、美味しく
料理を引き立ててくれる素敵な器
石井さん:実はかなり器好きで、千鳥さんはインスタでよく見ています。なので、今日はこうしてお店に来ることができて嬉しいです。
うつわ千鳥スタッフ(以下、千鳥スタッフ):ありがとうございます。器を好きになったきかっけはあるんですか?
石井さん:私が器にハマったきっかけは、あるとき毎日のお料理に対する気持ちがどこかマンネリ化してしまって、お料理を盛り付ける器にこだわってみようと思ったんです。そうしたら、いつものお料理が見違えて、見た目も良く楽しい気持ちになりました。それ以来、器に興味が出て色々と集めています。
千鳥スタッフ:そうなんですね。うつわ千鳥のオーナーも器によって料理の見え方が違うと気がついて、器にハマっていったそうです。そういう経緯もあって、うつわ千鳥では料理を盛ることまで考えて器を提案しています。
石井さん:お料理を盛り付けて提案されている千鳥さんのインスタは、とても参考にさせていただいています。私はもう10年以上前になりますが、当時雑誌で器の特集がよく組まれていて、情報を集めては陶器市や好きな作家の個展へ訪れていました。この頃から、お料理を器にどう盛り付けるか、器とお料理の相性を考えるのが好きになりましたね。
千鳥スタッフ:器からイメージを膨らませてお料理を考えるのは、楽しいですよね。石井さんはどんな器が好きなんですか?
石井さん:好きなものを見つけては買っていたので、初めはテイストにバラつきがありましたね。でも、年齢を重ねて経験が増えると、実用性も分かってきましたし、白磁や粉引のお皿、青い絵付けのもの、様々な形や絵柄の豆皿などバリエーションが増えてきました。
千鳥スタッフ:実用性があることは大切ですね。器にはコレクションする楽しさもありますが、一番の役割は料理を盛ることだと千鳥では考えています。料理をより美味しく見せてくれて、普段の食卓に取り入れやすいことは大事なポイントだと思いますよ。
審美眼が磨かれる器選び
千鳥スタッフ:ところで、石井さんは好きな作家さんはいらっしゃいますか?
石井さん:安藤雅信さん、阿部春弥さん、宮岡麻衣子さんの作品が好きですね。あとは、ボリュームサンドイッチの“沼サン”で有名になった大沼道行さんは、10年以上前に大沼さんの奥様を通じて知り合いました。大沼さんの作品には珍しい白磁の器をオーダーして作ってもらったこともあるんですよ。
千鳥スタッフ:みなさん今や人気の作家さんですね。大沼さんとも昔からのお知り合いとは! 彼の作品はとても人気で、うちもなかなか手に入らないぐらいです。
石井さん:そうなんですね! 作家さんの人柄を感じられるものや、繊細さが表現されている作品に惹かれますね。
千鳥スタッフ:ここ数年の器ブームで、人気作家さん=ブランドのように有名だからいいという選び方も増えてきたように思います。もちろんその選び方も楽しいのですが、石井さんのように自分の“好き”がわかってくると無名の作家さんを見つけ出す楽しさも出てくると思います。その作家さんが人気になることで、応援する楽しさや喜びも味わうことができますよね。
石井さん:たしかに色々な作品を見て、好きなものを選んでいくうちに、徐々に好きな作家さんを見つけていきましたね。それと、旅行にいくと、必ず器を探しに出かける時間をつくって、自分のお土産として1~2枚ほど選んで持ち帰っています。
千鳥スタッフ:それも出会いのひとつですね。器のお土産なら、買って帰ってきてからも日々使えるところが良いなと思います。使う度にそのときの旅を思い出すことができますし、思い入れも増しますよね。
石井さん:昔は、セットのものを選ぶようにして、同じ色柄の器を揃えていた時期もあったんです。ですが、収納も限られるし、一度そういうルールをとっぱらってみたら、より器選びが楽しくなりました。
千鳥スタッフ:集めていく楽しさもありますよね。お宝探しという意味では、益子の陶器市はオススメです。日本の各所から色々なものが集まって、とにかく規模が大きい、ですから事前にリサーチしていくといいです。そういうところで、好きなものを見つけるのも楽しいと思います。
石井さん:初心者にとっては、器屋さんってどこか構えてしまって気軽に行きづらいこともあるかもしれませんよね。そういう点でも、陶器市は自分のペースで見ることができるのが良いなと思います。
愛情を込めて使い続けられた器は
特別な存在に
千鳥スタッフ:器屋のオーナーは怖そうなイメージもあるようですが、「初心者なんです」と言えば親切に教えてくれる方が多いと思います。むしろ、そう言った方が、器屋の店主は器が好きで始めている人が多いので、「よし、教えてあげよう」という気持ちになるのではないでしょうか。
石井さん:たしかに初心者なら、選び方、扱い方、色々教えてもらえたら嬉しいですよね。
千鳥スタッフ:扱いが心配であれば丈夫な器がオススメです。例えば、磁器は欠けにくいですし、粉引きと言われるものは柔らかいので欠けやすい。陶器は吸水性があるので、使い始めにたっぷり水につけておく。粉引きの場合は米のとぎ汁で煮ると、シミが付きにくくなります。これらの方法を目止めといい、このひと手間で長く美しく使ってあげることができますよ。ただ、日々の食卓で使っていけば1つ、2つとシミもつくもの。割り切る気持ちも大切ですね。
石井さん:私もシミが付いたお皿がありますが、愛着のある器なので大切に使い続けていますね。
千鳥スタッフ:最初はシミをつけてしまった! と思うかもしれませんが、それを味と思って大切に使っていけば自分だけの器になっていくものです。あとは欠けてしまっても金継ぎと言って、かけらをつなぎ合わせる手法もありますし。とある蕎麦屋の女将さんに教えてもらったのですが、少し欠けた程度なら、ゴールドラメのネイルで応急処置することもできますよ。
石井さん:なるほど! そうやって、器には使い続けられることで生まれる特別感があるなと思いますね。
千鳥スタッフ:そうですね。器ブームにのって、割れたら直して長く使うということも広まってきたと感じます。選んだり、使ったり、器をぜひ楽しんでほしいなと思いますね。
石井さん:そうですね。私も、もっと器を使いこなせるようになりたいなと思います! 大好きな器についてお話できて楽しかったです。本日はありがとうございました。
うつわ千鳥
シンプルでセンスの良い、かつ実用的な作家の作品が揃うと定評のある器専門店。オーナーの柳田栄萬さんは、料理教室の講師をしていたキャリアの持ち主。そんな店主が選んだ盛る料理のイメージが沸く器をコンセプトにしたオシャレなインスタグラムにも人気が集まる。
撮影/寿 友紀<人物>、ヘア/大野朋香(air)
撮影協力/高橋奈央 デザイン/瀬尾侑平